桂川に面する東側の竹垣は 離宮内の竹薮の竹を根のついたまま押し曲げて 緑の葉のある小枝を止めつけた生垣。
昔の記録には 「川端の笹垣」と記されているとか。
今日(13日)撮影してきた 離宮の中から見た竹薮。
長く続く笹垣の内側には 竹薮が長く続き その竹薮と笹垣を守り育ててこられた長い年月を思い ちょっと感動。
二重桝形手水鉢は外腰掛の北端にあり その隣には砂雪隠がある。
外腰掛には一般参観者も座らせていただけたが そのため建物自体を撮ることはできなかった。
外腰掛は松琴亭茶室の待合として作られたもので 茅葺寄棟造り。
外腰掛に座ると 目の前に蘇鉄の群植があり 庭園の他の部分とは雰囲気がかなり違う。
この蘇鉄は 薩摩島津家より献上されたと伝えられる。
州浜は平らな石が敷き詰められて池に突き出し 先端には岬の石の上に小さな毬形の石灯籠が置かれている。
それを岬の灯台に 池を大海に見立てたものらしい。
その向こうの小島の更に向こうには松琴亭が見えるが 桂離宮のお庭では 松で視線を遮る手法がよく用いられていて 建物全体を眺めることはできない。
松琴亭 母屋の東妻に見える「松琴」の扁額は 智仁親王の兄君 後陽成天皇の宸筆で 拾遺集の「琴の音に峯の松風通ふらし・・・」から採られている。
お茶室は三畳台目の本格的な侘の囲で 「遠州好八窓囲」と伝えられるように 八つの窓がある。
台目畳の上は化粧屋根裏 三畳敷の上は竹竿縁蒲天井になっている。
台目畳には形式通り中柱を立てているが その柱の曲がった辺りに小枝が短く残されている。
昔の記録には 「袋掛節枝」とあり お茶入れの袋を掛けるためのもの。
壁の上方四分の一ほどは色が変わっているが かつて桂川の氾濫により浸水した跡と言われている。
賞花亭は 土橋を渡った大きな中島にあり 飛石伝いに山道を登った頂きに建っている。
道の途中に 「水蛍」という名の石灯籠があるが 見逃してしまった。
茅葺の切妻屋根に皮付の柱を用いた 横長の小亭で もと今出川本邸にあった龍田屋を 智忠親王の時にここに移された。
前面に掛けられている暖簾には 「龍田屋」「たつたや」と染め抜かれている。
笑意軒は 茅葺寄棟造りの母屋に杮葺の廂を付け 作り出しのある間口の広い田舎家風の茶屋。
前面の池は整然とした方形で 切石を直線的に畳んだ人工的な汀線をもち 船着場には 二箇所の石段から下りることができる。
花木の少ない桂の庭だが こちらではツツジが咲いていた。
船着場の東端には 船べりの照明に笠と火袋だけで殊更に低く置かれた三光灯籠がある。
二枚目の写真の左下隅に 小さく写っている。
土廂に平行して建物より長い延段があり 大小様々の自然石を並べ固められていて 「草の延段」と呼ばれている。
東端にある蹲踞には「浮月」の銘がある。
桂離宮は その地名はもとより 古書院の月見台、月波楼などの建物から 新御殿の「月の字形」の欄間、襖の「月字形の引手」など 様々なところに「月」への思い入れが感じられる。
この蹲踞「浮月」も 小さな水面に浮かぶ月を眺められたのかもしれない。
長四畳の口の間に続く六畳の二の間は 南側に肘掛窓があり その中敷居下の腰壁には金地にエンジ色のビロードが貼られている。
三の間の北と南には連子窓があり 北側の窓からは池越しに古書院が見え 南側の窓からは広がる水田を眺めることが出来た。
「笑意軒」の扁額は 曼殊院良恕法親王の筆。
笑意軒の名は 古句より採ったもの。
「一枝漏春微笑意」 : 一枝、春を漏らす微笑の意(こころ)
対岸にあった梅の馬場に列植されていた梅の花がほころぶ眺めをたのしむ場所だったのかもしれない。
離宮内の三軒の茶亭は「松琴亭」「賞花亭」「笑意軒」と いずれも「しょう」で始まっている。 いろいろ凝った造りの桂離宮なので 何か意味がありそうな気がする。
その扁額の下には束柱を中心に左右に三つずつ丸形の下地窓が並んでいる。
六つの丸窓は 下地の組合せをそれぞれに違えてあり 「四季の窓」と呼ばれることもある。
四角い下地窓は 左右で下地が違っている。
書院群は 右(東)より古書院・中書院・楽器の間・新御殿が後ずさりの雁行形に建っている。
古書院と中書院は 中秋の観月に最適の方位として 東から南に19度振れた当地に最も適切な配置がなされた。
新御殿は 智忠親王が後水尾上皇をお迎えするために増築された建物。
三つの書院は いずれも杮葺入母屋造りで それぞれの床の高さは異なるが 桂川の氾濫に備えて高くしてある。
御幸道の終わるところ 土橋の向こうに 茅葺切妻造りの中門があり その向こうに御輿寄(玄関)がある。
中門から玄関までの延段は「真の延段」と呼ばれるが 残念ながら撮り逃した。
深い杉苔の中を一直線に伸びる畳石は 様々な形の切石を幾何学模様に組み合わせたもの。
その先の四段の幅広い石段の上にある大きい沓脱石は 六人の沓が並ぶとのことから 「六つの沓脱」と呼ばれている。
御影石のたたき仕上げで 打ち水の溜まらないように上面を中高にしてある。
中門の北側 通用門を入った辺りに 内玄関があり その向かいには皇宮警察の詰め所があった。
「真の延段」を撮ることができたら 延段の「真」「行」「草」を並べられたのに 本当に残念。
最初の画像が 外腰掛の前の「行の延段」
二枚目の画像が 笑意軒の「草の延段」